トヨタ・シャープなど「太陽電池+ハイブリッド車」が、環境問題にとって電気自動車より大事と言える理由

記事では、7月4日に発表された「ソーラーパネルを載せたプラグインハイブリッド車」プリウスPHVを紹介しています。

このプリウスPHVは、高効率の太陽光電池を車の屋根などに貼り付けることにより、天気さえ良ければ約860W発電し56.3キロも走ることができるというのですから、プラグインハイブリッド車としてでなく、純粋なEV(電気自動車)としても魅力的な車です。

ただし、記事の中で気になったのは、充電環境を書いているところです。
現在使われている自動車をすべてEVに転換してその動力を賄うには、原子力にせよ、火力にせよ大量の電力が必要で、夏場の電力ピーク時には使えなくなってしまう
問題は夏場の消費電力ピーク時だ。EVの普及が電力需給を圧迫する可能性は大いにある
「天気さえ良ければ発電で56.3キロも走ることができる」プラグインハイブリッド車を紹介しているのですから、高変換率のソーラーパネルを貼り付けただけのドケケン」が将来出てきてもおかしくはなく、それに10kWhほどの電池が載っていれば、私の生活パターンでほぼ商用電源からの充電は必要なくなります。

そんな電気自動車が発売されれば、晴れることの多い『夏場』は暑さで効率は悪くなるかもしれませんが、充電はソーラーパネルから十分にできることから「電力ピーク時には使えない」ことはなく、太陽光で充電できる車なので「電力需給を圧迫する」こともないでしょう。高変換率ソーラーパネル電気自動車が登場すれば、書いている内容とは矛盾してしまいます。それはさておき、現在使われている自動車がすべて「EV」になれば当ニュースとしてはうれしいことです。

大前提として、「すべて」のガソリン車が「数年の内に」電気自動車に代わるはずもなく、電気自動車の割合が増えるとしても少しずつにでしょう。車自体が高価な物ですし、耐用年数は延び保有期間も長くなっていますから、フィルムカメラがデジタルカメラに置き換わったような短期間での移行はあり得ないでしょう。その間に予想される「電気」の手当は、携帯電話の基地局が増えていったようにされるはずです。

次ぎに「大量の電力が必要」と書いていますが、筆者はどれくらいの電気が必要となるのか具体的に考えて書いているのでしょうか。

古い記事ですが、10)EVの普及がすすめば原発が必要になるで計算したように、100万台の電気自動車が200Vの普通充電をするとなると1時間で300万kWhが必要になります。東京都の自動車台数は約400万台(2016年、バスや働く車も含む)でしたから、100万台は東京都の車の4分の1が電気自動車に入れ替わったとする台数です。(2017年の保有台数、電気自動車 103,569台、プラグインハイブリッド車 103,211台)

長距離トラックが電気自動車になるとは思えませんが(米・テスラは開発中)、東京都のバスも含めてすべての車が電気自動車になったとすると、300万kWhの4倍の1200万kWhが必要です。 東京電力の火力発電所は約4110万kW、水力で約987万kW、合計で5097万kW(1 時間発電して5097万kWh、2017年度末)ですから、その約4分の1が充電に使われることになります。

東京と神奈川・千葉・埼玉3県のすべての自動車も含めると約1550万台(2016年)でしたから、東京だけの台数の約4倍となり、1都3県の車だけでも、1550万台すべてが電気自動車となると、東電の火力・水力分の全部の電気は充電に使われてしまいます。つまり、電気自動車約1550万台分の普通充電と東電の火力・水力分の発電量はほぼ同じということになります。これでは確かに充電に「大量の電力が必要」のようです。

しかし、約1550万台が一斉に集中して充電するとして計算しましたが、そういう想定はあり得ないでしょう。それは商用車も含めてですから、会社に数十台ある電気自動車に200Vの充電専用線コンセントを台数分作るとなると、電気契約も見直さなければなりません。

一斉に充電を始めなければならないような車の使い方をする会社もあるでしょうが、営業から帰ってきた日中についでに充電したり昼休みを利用したり、夜間に分散させて充電した方が、契約電力のピークを下げることができ現実的でしょう。

他にも急速充電器での充電も考えられます。電気自動車の普及とともにその数も増えていくでしょうが、7月現在、東京・神奈川・千葉・埼玉の1都3県にある急速充電器は、合わせて1491カ所でしかありません。(充電器検索サイトGoGoEV)

200V普通充電は3kWの電力を使いますが、急速充電は速いもので90kWにもなります。(実測70kW程度)しかし、これは設置が始まったばかりで、一般的には高くて50kW、コンビニや道の駅などのは20〜30kWのものが多数です。このような家庭の何倍もある高い電力を見ると「大量の電力が必要」となるように思えますが、上に書いたように一斉に充電しようにも、現時点では同時に1491台しかできません。

100万台の普通充電が1時間で300万kWhですから、上に書いたように充電するにしても時間差が出てくるはずで、1日24時間の中で分散します。現在の料金体系では、深夜の方が安い場合がありますが、使用状況を見て電気料金を見直し、充電が少ない時間帯を安くしてそちらへ誘導すれば、集中することは避けることができるでしょう。

たとえば、太陽光発電からの電気を期待できる昼間の料金を安くしその時間帯に充電してもらえば、電気をめいっぱい電気自動車に貯めることができるかもしれません。2019年1月3日に九州電力は、太陽光発電の最大35万kWを無駄にしています。35万kWは、普通充電する電気自動車の約12万台をまかなうことのできる電力です。

時間以外にも充電する日も分散します。私の乗るアイ・ミーブは少ない電池(10.5kWh)しか載っていませんが、それでも毎日30km走ると3日ごとの充電ですみます。今となっては数少ない容量のアイ・ミーブでも毎日充電する必要がないのですから、リーフのように40kWhも積んでいたら1日の走行距離にもよりますが、充電日はさらに先延ばしになります。ですから約1550万台が一斉に充電する想定はあり得ません。


最初にドケケンの割合が増えると(不足するかもしれない)『電気』の手当はされるはず」と他人任せな書き方をしましたが、自分でできることもあります。現在の充電は、交流を直流に直す必要がありロスが出ますが、太陽光発電の直流をそのまま電気自動車に直接流せば、ロスもほぼありませんし商用電源に頼ることもありません。

実際に太陽光発電の電気で電気自動車を走らせようと、自宅にソーラーパネル1.6kWの1号機を作りました。100Vの交流にするためにいったん変換していますからロスが出ていますし、200V普通充電の倍の時間がかかりますが商用電源に頼ることなく充電ができています。「夏場の消費電力ピーク時」こそ電力需給を気にせずに充電することができます。
0627PV平ら
(左奥のパネルが充電用の1.6kW)
アナログ的「V2R」<2019 /07/17>

この時期のように梅雨空が続くと充電できない日もありますが、全くできないわけではなく、今日も時より日が差すと固定バッテリーの2kWhはいっぱいになります。ちりも積もれば山となるの例えのように、2019年11月からのFIT終了 でまず電力市場に出てくる約53万世帯の約200万kWは、約70万台の電気自動車を充電できる能力があります。


「大量の電力が必要」と電気自動車による電気不足の心配をする前に、電気自動車に蓄えられた電気が電力の調整になくてはならない日が来るかもしれません。

国内初、電気自動車の蓄電池を活用した電力系統への電力供給(V2G)実証試験の実施( 2018/11/07)のように、電力会社などが、電気自動車と電力系統(グリッド)とを結びつけ、電気自動車の蓄電池に充・放電し、需給調整能力があるかどうかを検証しています。将来は、余った電気を電気自動車に貯め、「夏場の消費電力ピーク時」のような必要なときに取り出して使おうとしているのです。
EVから送配電 九電が拠点設置 福岡に、実証試験向け(2019/01/05)

電気自動車に限らず車は、1日の大部分動かずに駐車しています。普通の車は荷物置き・休憩室にしかなりませんが、アイ・ミーブのように10.5kWhの小さな電池でも家1軒1日分の電気を蓄えていますから、電気自動車は大容量の動く蓄電池であり、これを使わない手はありません。

電気自動車(EV)から給電するローソンでの実証実験 — V2H & V2G 経由 VPP へ!(2019/07/22)

イオンモール堺鉄砲町にて、バーチャルパワープラント実証ならびに環境価値実証を開始(2019/07/25)・・・イメージ図にあるEVはアイ・ミーブっぽい

長くなったので、詳しくは書きませんが、電気自動車はガソリン車よりも効率よく走るために、その普及は日本の石油輸入量を大幅に減らし、石油資源の無駄を省くことにつながります。もっとも人口減やシェアリング、自動運転の普及によって、車そのものの数が減っていくでしょうから、ガソリン車が電気自動車に置き換わったとしても、電気の使用量が比例して増えることはないでしょう。

電気自動車による電気不足の心配をする前に、自動車を取り巻く環境・将来像をふまえて、電気自動車が普及すればどのようなメリットがあるか考えてみるのも面白いものです。

電気自動車は火力発電の電力を使うから意味がない?(2018/02/22)
3.世の中の乗用車が全部電気自動車になったら火力発電は足りなくなる?

電気自動車が増えても大丈夫<2019 /01/05>

再生可能エネルギーの地産地消を目指す( 金沢工業大学 未来社会 Society5.0をリードする研究力を身につける。令和元年度から新たな教育の取り組みを開始<2019 /07/10>